25年前の現代思想

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米軍の飛行場の関係で、実家の防音工事が始まるため、たくさんの本を救出してきました。
もちろん工事自体は国の全額負担なのですが、物を移動したりするのはやらなくてはいけないため、
あらかじめいらないものは廃棄しておかないといけないためです。

それにしても、ほとんど兄の書物ばかりでしたが、
考古学関係のものだけだと思っていたら、現代思想の本がごっそり出てきました。
そう言えば兄に内緒で、本棚から引き抜いては読みあさっていたのを思い出しました。

ヤーコブソン、ソシュール、デリダ、バルト、ドゥルーズ、ガタリ、マルクス、ヘーゲル、
バタイユ、レヴィストロース、アルチュセール、スピノザ、ホワイトヘッド、プリコジーヌ、
フーコー、デカルト.............。ニーチェ、ラカンが行方不明...........。

「お前が本気で作家をやってるんだったら、もう一度全部読み直しておけよ.....」

そうして年のはじめは、兄の現代思想講座から始まりました。
夜も更けて眠かったのですが、なんともありがたく、しっかりと拝聴しました。

僕が現代思想に没頭していたのは、今から25年くらい前の高校生の頃でした。
ブーム?だった80年代の『リゾーム』の頃です。
それから、冷戦が終わり、湾岸戦争、9.11、イラク戦争、そして3.11。世界は大きく変わりました。
今ではすっかり哲学的思想は影を潜め、世界や社会を軸にした思想が中心になっているようです。

それでも25年の間、思い出す度に何度か読み直していましたが。
実はこの3年くらい前からというか、作品を制作するようになってから、
いろんな言葉がつながってきているのを実感しはじめていたんです。

正直に言うと、社会に出てからというもの、自分はすっかりパラノ型の人間になっていました。
浅田彰さんの「逃走論」の中で、パラノ型というのは、偏執型(パラノイア)のことで、
過去のすべてを積分=統合化して、背負っているような人を言います。
難しいのですが、主体としての自己の歴史的一貫性を守り抜こうとしてるような人のことです。

それが作品制作とともに、スキゾ型の側面も現れるようになったのです。
スキゾ型とは、分裂型(スキゾフレニー)で、そのつど時点ゼロで微分=差異化してる人をさします。
常に今の状況を鋭敏に探りながら、一瞬一瞬にすべてをかけるギャンブラーみたいな人のことです。

僕らの通常の業務は積み重ねですから、パラノ型の守り方というものは大事だと思います。
ですが、発想という面で考えると、新しい物を生み出すためには、重いおもりとなりかねません。
資本主義の中でのマス寄りな思想の元では、フォーマットのあるもの、誰かが示したものを作ることが、
最短距離で効率の良い考え方だからです。

「自由の名の下にいたけれど、今までは結局のところ、本当の意味の自由ではなかったのかもしれません。
蓄積主義で取り込み主義で儲け主義で、自分を豊かにすればそれで終わりというような、
そういう近代のイデオロギー的な個人主義があった」と、浅田彰さんは書いていましたが、
25年経った今でもそういう世の中というのは変わっていないようです。
そんな中で、ドゥルーズ、ガタリの『ミル・プラトー』のノマディズム的な多様性の中に、
僕の求めるもの作りのあるべき姿はあるのかなと再確認しました。

「否定性を中心にして、世界をみたり、人生をみたりするのはもうやめよう」

そう言って彼らは、長く続いていた暗い思想の概念を変えてくれたはずでしたが、
現代思想家の声が届きにくくなくなった今の世界は、
再び否定性を中心にして回りはじめてしまうのでしょうか。
もし回り始めてしまっていたとしても、思想は常に多様化しているはずですから、
もう一回りして来た時には、しっかりと受け止められるように、
兄の言う通り、もう一度読み返して、少しでも理解しておきたいと誓う今日この頃です。

もうひとつ、GEODESIQUEさんのアトリエの名前は『ミル・プラトー』。
だからというわけではなかったのですが、『球根』を選んだのは少なからず、
そういうことでした。小島先生には指摘されましたが、16ケ月前はこういったことを
表現するのには抵抗があったというか、恥ずかしかったからかもしれません。
「作家でもないのに....」と思っていたものですから、躊躇していました。

さらっと表現出来ればいいんですけれど、まあ、こういった具合に少々長々となってしまうんです。

なんだかわからなかったようですが、とりあえず本年の課題はこのようなところです。
頑張って躊躇せず、自分を出していきたいと思います。

皆さま、本年もどうぞよろしくお願いします。

2012年11月

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